A.山歩き/2.山紀行/・・天城山
天城山(万二郎・万三郎岳)

ーブナの巨木が立ち、深山の趣のする樹間にピンク色のシャクナゲが浮かんでいたー



天城山(2001-5-21歩く)
天城山のシャクナゲの見頃は5/中旬から6月/中旬であるが、今年は桜の開花も 早く、シャクナゲも早めと予想して天城山に登った。
自宅を6時に出発して熱海から熱海峠に上がり、伊豆スカイラインを天城高原に向 かう。熱海ICからしばらくはガスの中で、道の両側を朱色のツツジの花が 幻想的に次から次ぎへと流れてゆく。伊豆スカイラインはツツジが満開であった。 冷川ICを過ぎるとウツギの花が多くなり、初夏を感じさせてくれる。
終点の天城高原ICをでて、直ぐ右に曲がり、天城高原ゴルフ場めざして上っ ていく。この道は先で行き止まり、という標識があったり、ゴルフ場に近づく と、「ここでUターン方」という意味の標識があったりするが、専用の駐車場があ ったはずと、そのまま進む。そうするとゴルフ場のゲート前に「ハイカーの駐車場」 という標識が立ち、ゴルフ場の中へと導いている。 少し入って行くとクラブハウスの手前の左側にトイレまで完備された立派な広い駐車 場が見えてくる。目見当で60台位は駐車できそうである。既に自家用車20台位とマイ クロバス1台が駐車している。
登山口を出発
やっと、自宅から2時間かかって着いた。 早速、身支度をしてコースの案内板のあるところから樹林の中へ下るように入って行 く。道の右側は杉林で、左側は伊豆の山の雰囲気のするアセビ、ヒメシャラの混じる 雑木林である。野鳥のさえずりを聞きながら同じような樹林の中の道を緩やかに上がっ 行き、左斜面をトラバース気味に下り出すと、直ぐに万二郎岳分岐に着く。
そこにはベンチがあり、小休止する。今回は万三郎岳の方から廻ることにして 左の万二郎岳への道を見送り真っ直ぐ行く。しばらく涸れた河原状のところを行き、杉の 林の中を上がっていくと菅引林道への分岐となる。左の万三郎岳への道に入ると ヒメシャラ、アセビ、コナラ等の茂る雰囲気の良いところとなる。やがて涸れ沢 となり、渡って登り返すとまた杉林の右下の涸れ沢に向けて下る。沢を渡って右の斜面 に取りつくとすぐに平坦となって雰囲気の良いヒメシャラ林の道を行く。
ヒメシャラ林を過ぎるとアセビの混じる斜面を左に見て巻くように廻りこんで行く。 やがて、右前方に樹間から万三郎岳であろうか山が見え隠れする。廻りこんで行くう ちに樹林も新緑の美しいブナ、コナラ、ミズナラなどに変わってくる。そしてまもな く、大石のゴロゴロした大きな涸れ沢に到着する。そこには真新しい「水場」の標識が立っ ている。しかし、水は流れていないようである。ここまで出発してから約1時間程 掛かり、休憩することにする。
シャクナゲの道
この沢からブナ、ミズナラなどの大木の茂る斜面を巻いてい く。少し行くと左上に最初の待望のシャクナゲが現われた。今日のシャクナゲはどんな 様子だろうかと期待と不安の入り混じる気持ちで歩いてきたが、いよいよ面会である。 近づいてみると、なんと満開の薄いピンクの花が溢れるばかりに樹間に浮かんでいる。 これで今日はシャクナゲを満喫できると思うと嬉しくなる。早速カメラを出して写す準備をする。
少し行くと大木の茂る斜面に、シャクナゲが次ぎから次ぎへ と現われる。余りものすばらしさに喚声が上がる。夢中になって写真を写す。分って はいたが余りもの見事さに構図も絞りも気にすることを忘れてしまう。今まで山歩きで シャクナゲを見て来たがこんなにすばらしいのは始めてである。
薄いピンクのもの、濃いピンクのもの、ホットピンクの蕾といろいろな色合いの シャクナゲが斜面の新緑のブナ、ミズナラなどの大木の樹間に浮かんで点在している。 まさに深山の趣のするシャクナゲの咲く風景である。公園で見ても余り感動しないが 自然の中のシャクナゲは本当に美しいく雰囲気がある。シャクナゲは本当の住処で その美しさをより輝かせているようである。山歩きができて、このよう な深い山で すばらしいシャクナゲを見れたことの幸せをしみじみと感じる。
廻りこんで行くとシャクナゲの姿が少なくなり、今までの巻き道から一転して少し 薄暗い樹林の急登の道となってジグザクに登って行く。日が当たらないせいか少しある シャクナゲの色も薄いようである。これを登りきると日の差し込む斜面をトラバース 気味に登って行く。そこからまたシャクナゲが多くなり、愛でながら登ると前方に 白い花が見える。シロヤシオが咲いているのかな、と思って近づいてみると、珍しい 白いシャクナゲであったのでビックリする。ピンクと白のコントラストが美しい。
間もなく尾根に到達し、そこには道標が立っていた。涸沢分岐点 、頂上まで40分とある。普通の山であったらシャクナゲはこれでおしまい、とい ったところであるが、天城山の凄いところはこれからが本格的なシャクナゲの群生地 であることである。
これまでは斜面の樹間のシャクナゲを眺める感じであったが 、涸沢分岐点からは少しオーバーかもしれないがまさにシャクナゲのトンネルをくぐ る感じである。ここからは登りがきつく、一息入れるために立ち止まってはシャクナ ゲを愛でる、を繰り返しながら登って行く。
落花しているものは何もなく、満開から 8分咲きであろうか、本当に良い時期に来れたものだと、つくづくと思う。シャク ナゲのトンネルをくぐりながら美しいシャクナゲ庭園みたいなところを通過して、更に 登って行くと、だんだん蕾のシャクナゲが多くなる。そして、前方の樹間から 万三郎岳頂上近くの尾根が見えだすとやがて頂上の広場に飛び出す。
万三郎岳山頂
昼も近いこともあり大勢の人が昼食を取っている。われわれも昼食を取った後 万ニ郎岳の方に下る。 頂上より5,6分ほど下ると平坦となり、蕾の一杯つけたミツバツツジが目立つ 尾根を行く。
やがてブナなどの大木が茂り、樹間に大きなシャクナゲが見られる 雰囲気の良い道 を行くようになり、「ブナの巨木」の看板もでてくる。巨木を見るために左の樹林の 中に入って行くと、そこにはブナの巨木が数本どっしりと山の主のように 立っていた。そしてその周りをピンクのシャクナゲの花が彩を添えている。その光景 を見ていると、自然と、畏敬の念が湧いてくる。そして、いつまでも、いつまでも、立ち去り難い思い であった。
「ブナの巨木」を過ぎるとアセビの古木の道やブナの道を下っていく。やがて 鞍部の「石楠立」に着く。この辺にもシャクナゲが見られ、大勢の人が思い思い に休んでいる。それよりアセビ、カエデなどの混じる樹林の道を登って行く。
やがてアセビの巨木の茂るところとなり、傾斜も緩み、「アセビのトンネル」 の標識が出てくる。掘れた溝状の道の上に両側からアセビの大木が覆い被さり、 まさにアセビのトンネルがズッと続く。約2〜300m位は続いたような気がする。 終わりにも「アセビのトンネル」の標識が立っている。
ここを過ぎると下りとなり、下る途中、これから行く稜線と 人が休んでいる万ニ郎岳斜面の岩場と万ニ郎岳のピークが見える。平坦になると高度が 下がったこともあり、咲いているミツバツツジも多く見うけられるようになる。 やがて最後の登りに差しかかり、時々ピンクのミツバツツジが気持ちを 和ませてくれる。 ひと頑張りすると、やがて、人が休んでいた岩場に到着する。そこから、 今歩いて来たアセビのトンネル の馬の背が展望される。一休みした後、本当に最後の登りを登る。これで登りも おしまいだと思いながら登ると意外にあっさり万ニ郎に着いた。
万ニ郎岳山頂
展望は何もなく、小休止の後早々に下る。 山頂附近の下りの道はアセビの混じるミツバツツジの道で、まだ蕾である。 来週あたりは満開になりすばらしい景色になるだろうと想像しながら下る。 ジグザク下ると アセビの混じる雑木林の緩やかな下りの道となり、山頂から45分ほどで 涸れ沢を渡りその沢沿いを行く。またその沢を渡り返すと直ぐ万ニ郎岳分岐に着いた。 ベンチで一休みして、今朝ほど歩いた道を野鳥のサエズリを聞きながら戻った。

(コースタイム)
自宅6:00−天城高原ゴルフ場(P)8:05〜15−万ニ郎岳分岐 8:35〜40−水場9:30〜35−涸沢分岐10:20〜30− 万三郎岳11:40〜12:05−ブナの巨木12:25〜35− 石楠立12:50〜55−展望台13:45〜50−万ニ郎岳13:58〜 14:05−万ニ郎岳分岐15:00〜05−(P)15:30
このコースタイムはシャクナゲ等の写真を写しながらのんびり歩いたものですので、 参考コースタイムとして見てください。

(地図)
・昭文社 山と高原地図 伊豆
・ヤマケイアルペンガイド「駿遠・伊豆の山」の地図

●追記
  • 万三郎岳から万ニ郎岳へ下る道は登ってきた道の直ぐ隣りで同じ方向に下る感じで す。万三郎岳の頂上からは八丁池方面にも広い道が下っており、それと間違い易いので良く道 標を確認してから下る必要があるようです。
  • 今年はシャクナゲの花付きが良く、途中会った人の話しによると、6年振りの当たり年で あるとのことでした。
  • 周回コースをどちらから廻るか。幾分楽な万ニ郎岳から廻る人が多かったようです。 シャクナゲを見る場合は、登りながら下から見た方がきれいに見えますので、 万三郎岳から登る方が良いように思います。
  • 帰りも伊豆スカイラインを通って来ましたが、熱海の玄岳ハイキングコース の氷ケ池附近はヤマツツジと思いますがツツジが多く満開でした。ハイキングには この時期が良いようです。
[山紀行]