A.山歩き/2.山紀行/・・富士山・双子山

富士山・双子山
ーー自然林の紅葉、溶岩流と幕岩、ススキの原のフジアザミ、冠雪の富士山ーー


富士山・双子山
9/末頃になると富士山は初冠雪の季節になる。そうするとこの双子山は11/初旬頃までハイキングシーズン となる。
新五合目から幕岩までの、樹林帯の紅葉、リンドウ、リュウノウギク、トリカブトなどの花々、真っ赤に色ずいた ガマズミ、ナナカマドの実、梢越しに望まれる雪を頂いた富士山。幕岩付近の溶岩流跡と青空をバックにした富士山。 幕岩から御殿庭分岐までのカラマツの黄葉、小さいススキの穂波。 御殿庭分岐から双子山の鞍部までの火山礫の斜面に点在するオンダテとメイゲツソウの黄葉、強風でガス の舞う富士山山頂、ススキの原とフジアザミの群生、等々。何回となく歩いているが いつも楽しいハイキングを提供してくれる。

御殿場駅より国立青年の家の方へ富士山に向かって真っ直ぐ上って行く。青年の家を過ぎると 道は富士山スカイラインに入り、くねくねと曲がりながら上って行く。途中、タイミングかよければ フジアザミや紅葉が見られる。やがて新五合目の標識が出てきて、右折する。まもなくBOAC航空事故の 慰霊碑に至り、さらに火山礫の道を上って行くと左側に大きな駐車場が見えてくるが、それを見送り、最も上の駐車場 まで上って行く。そうするとトイレのある駐車広場に至る。そこの前方左側が登り口であるので、左側に 駐車する。右側の奥は御殿場口の登り口で、新五合目バス停と売店がある。しかし、9月頃になると閉鎖 されて閑散としている。
身支度をして駐車場の左隅から火山礫の道を上がって行くと、雪を頂いた富士山が前方に大きく見える。 時には富士山の火山礫の斜面をパラグライダーがゆったりと滑空しているときもある。 左側は豪雨の時の沢となっていて大きなVの字状の火山礫の溝となっている。そこに立ち入らないように ロープが張られている。少し行くとロープは溝の浅いところで対岸に伸びている。そのロープにしたがって 対岸に行くと幕岩方面の道標があり、樹林帯に入って行く。
苔の生えている草地にカラマツ、ミズナラ、カエデ、ダケカンバ、ヤマボウシなどが混じる樹林帯である。 すぐそこまで火山礫の道であったので緑が豊かでびっくりする。やがてカラマツが濃くなり、 樹間には倒木が苔むして、長い年輪を感じさせる。15分も行くと直径30m位ぽっかりと開ける。 地面は火山灰で踏み跡がはっきりしないので、ガスった時は分かりずらいが、兎に角真っ直ぐ横断すると また、樹林帯へ入っていっている道が見つかる。少し行くとまた同じようにぽっかりと開けたところに でるが、同じ要領で横断し、シラビソやカラマツの混じる樹林帯の道を緩やかに登って行く。
ここからは薄暗い樹林帯の変哲も無い道で、我慢してしばらく行くと、右側がなだらかな広々とした 草地の斜面にミズナラ、モミ、ダケカンバなどの大木の茂る深山の雰囲気のするところにでる。 富士山麓にもこういうところがあったのかと驚き、富士山の懐の深さを感じさせる。しばらく大木の茂る静かな 森を歩いて行くと、モミの木が多くなり道標のある赤塚分岐となる。
そのまま真っ直ぐ行くのが正規のコース であるが、左側の赤塚の方へ時間があったら寄り道しても良い。少し入って行くと、道端には 真っ赤なバラの実やリンドウの花が見られ、振り返ると梢越しに雪を被った富士山が見られる。運がよければ アカモミタケも採れる。しかし、赤塚までは相当あるので、真っ直ぐ行って左にカーブするあたりで引き返してき たほうが良い。
引き返して正規の少し暗いモミの木の茂る道を行く。道はやがて斜面を横断しながら 右にカーブし大きな沢に出る。富士山の火山礫の斜面のイメージからすると、こうゆう沢があったのかと 驚くところでもある。この辺はガマズミが多く、真っ赤な実が鈴なりになっている。また、大木の 茂る広葉樹林帯で、いろいろな樹木の紅葉が見られ、雰囲気の良いところである。
沢に掛る丸太橋を渡って 対岸に取り付き左にトラバースし尾根に廻りこむと、また、すばらしい巨木の森に入って行く。ブナ、ダケ カンバ、ミズナラ、カエデなどの森である。遥か頭上の青空に輝くダケカンバの白い幹とキラキラと光る黄 葉、樹林帯のフイナーレにふさわしい光景である。ここで十分紅葉と森の雰囲気を満喫すると、突然、溶岩が 流れて固まった沢に飛び出す。
今までの樹林帯からの突然の変化で、びっくりする。 この溶岩流の上流に見える岩壁が幕岩である。この溶岩流の適当なところで何時も一休みしている。下には 箱根の連山が眺望され、上を見ると幕岩の上に雪を頂いた富士山が見え、幕岩の右にはたわわに赤い実をつけたナナカ マドの大木が見られる。 ここから御殿庭分岐(昭文社地図では幕岩上)への登り口は若千わかりにくい。この溶岩流沢を上流に向 かって登ると、幕岩の岩壁より20m位手前のところに左側の樹林の急斜面を登っている道がある。それが登り口 である。木に隠れて見えにくいが左側を注意深く見て行くと見つかるはずである。
この斜面をジグザク登るとこの溶岩流沢の右岸(上流から見て右)に達する。すると左から上ってきている 山道に交じ合い、それを右に登って行くと、幕岩の上に出る。
そこは真っ直ぐ御殿庭分岐へ行く道と、右斜め前方に行く双子山の鞍部への道との分岐点になっている。 双子山に行くには後者の方が近道であるが、何も目標の無い火山礫の中の道で、単調であるし、ガスった時 などは迷いやすいので、御殿庭分岐の方から廻ることにする。
ここからは草原の所々に若いカラマツの木の生えている道を緩やかに登って行く。所々に道標があって それにしたがって歩いて行くと、溶岩流沢の支流を渡り、また若いカラマツ林の中を緩やかに登る。だん だんカラマツも少なくなり、潅木やススキの生える火山礫の道となり、目の前に道標が立っているのが 見えてくる。
道標の立つところを左に行くと御殿庭で、右に行くと双子山である。ここからは完全な火山礫の道であ る。なだらかな美しい曲線の火山礫の斜面には黄葉したオンダテ、メイゲツソウ、イネ科のウラハクサが点 在している。どきどきガスが流れてきては幻想的な美しい光景を見せる。火山礫の道には白ペンキの塗られ た石がところどころに置かれている。それと正面の双子山の谷間を目印に真っ直ぐ緩やかに登って行く。
少し行くと溶岩流沢の上流の窪地を渡る。やがて前方に道標が見えてくる。それは幕岩からショート カットで登ってきた道と交合っている点である。振り返ると幕岩から御殿庭分岐にかけてのカラマツ林の 黄葉が美しい。また、富士山の山頂をみると時には強風のために雪煙を舞い上げているのが見え たりする。
双子山に近づくと、山道付近の斜面は、一面ススキの原である。 ススキの中の所々には愛らしいフジアザミのピンクが覗いている。ススキは風になびき、逆光に照らされて キラキラと輝いている。
このススキの原を過ぎると双子山の谷間すなわち鞍部に達する。ここから右の山頂に祠のある双子山を 往復する。15分もあれば往復できる。山頂からは富士山が大きく迫って見える。 往復したら、それからは砂走りの下りである。下の駐車場目指してひたすらに下るだけである。 ガスっている時は駐車場の左脇までつながっている涸れ沢のV字状溝が双子山を過ぎるとだんだんはっ きりしてくるので、これを目印に下ると良い。

(コースタイム)
御殿場口新五合目(P)ー50分ー赤塚分岐ー30分ー幕岩ー35分ー御殿庭分岐(幕岩上)ー35分ー 双子山鞍部ー30分ー御殿場口新五合目(P)

(地図・ガイド)
・1/25000地形図 印野、須走
・昭文社山と高原地図 富士・富士五湖
・略図 下記
●追記
  • 6/下旬にも一度歩きました。双子山のススキの原の斜面下にカラマツ林が 点在していますが、その林床にベニバナイチヤクソウが群生していました。
  • 富士スカイラインおよび御殿場口新五合目付近の紅葉は10/中旬頃です。
  • 本ハイキングコースは晴れていればどうということないはないですが、ガスった日などは火山礫 の道は迷いやすいので、幕岩で引き返したほうが良いです。
[山紀行]