A.山歩き/3.山紀行/・・笠取山
笠取山

ーーニリンソウの咲く沢沿いの道を経てシャクナゲの山頂へーー


笠取山(1996-6-17歩く)
笠取山はレンゲツツジがすばらしいということで気になっていた。しかし、 塩山から柳沢峠を越えて奥多摩の方へ戻るのがなんとなく躊躇させていた。 白沢峠から倉掛山へはいつも広瀬湖のほうから登っていたが、 裏側の高橋から登った方が楽そうなのを発見し、行ってみょうと思い立ち 柳沢峠を越えた。これで吹っ切れて笠取山に登ることになった。
新犬切峠から林道に入り、しばらく舗装が続いていたが途中から ガタガタ道となる。 慎重に腹を擦らないように運転し、ようやく作場平橋に着く。 橋のたもとは広場になっており、十分な駐車スペースがある。 登山口には真新しい案内板と道標があり、登山道は整備されたばかりであった。
登山口からカラマツ林の平坦な整備された道を沢の音とハルゼミの声を 聞きながら行く。丸太を横に並べた道や石畳の道がところどころにある。 古道のような石畳の道は滑って歩きずらい。やがてヤブ沢の枝沢出合いに着く。 広場となっていて小さな橋があり、ニリンソウが咲いていて、 ひと休みするには雰囲気のよいところである。 そこからカラマツ林を行くとヤブ沢経由と一休坂経由の分岐点に来る。
一休坂は急登とあるが距離をみると若干短かいので右手の一休坂の方に 向かうことにする。 これから一休坂かと気持ちを引き締めて登る。 しばらく行くとヤブ沢から登ってきた道と交わり、一休坂の道標があった。 ベンチもあり、一休みする。
一休坂からは笹竹の中にカエデ、モミジ、ミズナラなどの大木が茂っている 広い遊歩道という感じの道である。尾根の右側を巻きながらの急登が続くが、 心地よい森林浴の道である。 一度稲妻道を登ると小さな鞍部を越え、左に谷を見ながらの緩やかな下りの カラマツ林の中の道となる。今まできつい登りであったので呼吸を整える個所 でもあるが、折角登ったのにもったいない気がする。 やがて沢のせせらぎが聞こえてきて小さな沢にたどり着く。
透明できれいな水が勢いよく流れており、右折して沢沿いの道となる。 沢と登山道の両脇はニリンソウの群生が続く。気持ちのよい道であるが結構きつい。 時々沢の水で喉を潤しながら登る。ニリンソウの道がザレの急登に変り、 それを登りきるとようやく源流らしきところにたどり着いた。 大きな芭蕉の株が一つあり、水場になっている。 笠取小屋の水場であるようですぐ上は広場になっていて小屋が2棟あった。 ベンチでひと休みし、いよいよ笠取山へ向かう。
小屋の裏には車でも通れそうな立派な斎木林道が通っており、 その脇には真新しいトイレが建っている。 また、小屋の裏側を見るとピンク色の花が咲いている。 シャクナゲのようである。頂上はここより標高が高いので、 シャクナゲの花が咲いているかもしれないと思うとワクワクするが、 目当てのレンゲツツジがここまで登ってくる途中見えなかった。 どうもツツジは早いのではと予感する。
斎木林道を進むにしたがって新緑が薄くなってきた。 案の定、雁峠分岐付近の笹の原にまじるレンゲツツジは蕾が多少 赤くなっているだけで開いているものは見当たらない。 雁峠の方に目をやると燕山の新緑の斜面に雁坂峠方面へのジクザク のトレースが見え、またピンク色のかたまりがところどころに散りばめられ 彩りを添えている。レンゲツツジより先に咲くミツバツツジのようである。
気を取り直して笠取山へ向かう。 途中、小さなピンクの蕾を沢山付けたコナシを見つけ、写真をとる。 いよいよ笠取山頂上への急登である。 こんなきつい斜面で一直線の直登になっているケースは珍しいような気がする。 しかし、笠のように美しい山にジクザク模様は景観を損ねるので 一直線がふさわしいかもしれない。また、道の右側は山火事にあって頂上まで 枯れ木になっている。 この直登の道が防火帯の役目をして延焼を防いだようだ。 黙々と登っては立ち止まって振り返る。 眼下には笠取山麓の草原、右手には雁峠と雁峠山荘の屋根が見える。 ようやく頂上の平坦部である。
さっそく目がいったのはシャクナゲである。 一部山火事で焼けて枯れており、その奥には白いシャクナゲが見えるが、 半分位はすでに萎んでいる。笠取山の標識がないので、 さらに行くと向こう側にピークが見える。 岩の混じる道をいったん下って登り返して頂上となった。
頂上には小さな手製の標識が木にぶら下がっていた。 シャクナゲは手前のピークより豊富で、色がピンクで鮮やかであった。 また、ミツバツツジも満開であった。 いつだったか、シャクナゲを見るのに十文字峠へ行った。 その時も時期はずれであった。今日は色鮮やかな蕾まである。 夢中になって写真を写す。
ところがカメラの裏側のモードボタンを何かのはずみに押したらしくどうも 調子が悪い。しょうがないからバカチョンモードに切り替えて写す。 いろいろボタンを押して直そうとしたがダメである。 こういう時は余りいろいろモードのあるカメラは考えものである。 また、マニアルを持ってこなかったことをも反省する。 こんなことで頂上では周囲の山を見渡す余裕もなく下山した。
斎木林道ではオバサン達の大集団と会う。 「こんなに大勢の人が頂上で休む場所あるのかね」 と家内は他人事ながら心配していた。我々は雁峠へと向い、そこで昼食とした。 広瀬方面に少し下ったところに涌き水のある小さな湿原があり、 クリンソウ、ニリニソウなどが咲き乱れていた。 写真を写し下山した。
笠取小屋付近に着いて、白沢峠の方から来る集団が多い。 もと来た道を戻るのも面白くないので、リーダらしい人に聞いたところ、 ヤブ沢経由の道がこの先15分ほどのところにあるとのこと。 ヤブ沢経由で下山することにした。 斎木林道の道端にはツバメオモトとミツバツツジがところどころ咲いていた。 程なくヤブ沢への分岐となり左にくだる。 ヤブ沢の道は、最初、遊歩道といった感じで、 起伏がなく単調に樹林の道を下って行く。
やがてヤブ沢の枝沢であろうか小さな沢沿いに下ることになる。 道沿いにはニリンソウが多くなり、沢の湿地を木道でわたるところでは クリンソウがわずかであるが咲いていた。 枝沢がヤブ沢に合流するあたりに満開のレンゲツツジがあり、 笠取山ではレンゲツツジの早いことを証明していた。
やがて、一休坂分岐となり、 見覚えのある沢沿いの丸太敷きや石畳の道を下って作場平橋に着く。 朝は数台の車であったが今は広場をはみ出すほどの車が駐車している。 早朝の山登りであったので、静かな山歩きが出来たことの充実を 感じながら帰路についた。


(コースタイム)
自宅4:30−相模湖IC5:42−塩山IC6:53−作場平橋7:35〜45 −一休坂分岐8:10−一休坂8:22〜30−沢沿いの道入口9:00 −笠取小屋9:20〜30−笠取山10:20〜40−雁峠11:20〜12:00 −笠取小屋12:15−ヤブ沢道入口12:28−一休坂分岐13:05 −作場平橋13:25

(地図)
・昭文社 山と高原地図 「大菩薩連嶺」
・1/25000地形図 雁坂峠、柳沢峠

●追記

  1. 作場平橋までは柳沢峠を越えて落合から高橋、一之瀬方面へ左折します。 しばらく行くと右に一之瀬、新犬切峠方面へゆく道が分かれています。そこを登っていきます。 道は舗装はしていますが、狭く、カーブが多く、またカーブミラーも少なく スピードの出しすぎは危険です。 平坦になると峠になり、丁字路になっています。右は旧犬切峠で一之瀬へいきますが悪路で 勧められません。作場平橋へは直進します。
  2. 新犬切峠から作場平橋までの林道は当時は一部未舗装でありましたが、現在は 完全に舗装されています。
  3. 駐車スペースは作場平橋の登山口に十分あります。
  4. 帰りは少し遠回りになりますが一之瀬を廻って 青梅街道に出るのも良いと思います。一之瀬高原の白樺や一之瀬川・柳沢川の渓谷が見られます。
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