A.山歩き/2.山紀行/・・小金沢山
小金沢連嶺・小金沢山




ー明るくのびやかな草原、石丸峠・狼平から苔むす樹林帯を経て小金沢山へー

小金沢山(03-08-21歩く)
大菩薩の石丸峠から小金沢山、牛奥雁が腹摺山、黒岳と湯ノ沢峠まで連な った山々を小金沢連嶺呼んでいる。車での山歩きをしていることもあり、アクセスするとすると大菩薩から 熊沢山越えをしなければならないと思っていた。一山越えてまたその山を越えて戻ってくるというのは ’しんどい’という気分になり登る気にならなかった。しかし、ある本で読んだレンゲツツジの咲く頃の 狼平の魅力がずーと頭に残っていた。
大菩薩を源流とする日川をせき止めて葛野川発電所のダムができて、 嵯峨塩・裂石林道が嵯峨塩鉱泉から大菩薩の長兵衛山荘のある上日川峠まで全面舗装された。 また、最近、上日川峠と石丸峠間の登山道と嵯峨塩・裂石林道が 交差するあたりは、上日川峠付近にかけて園地となり、遊歩道も作られ、案内板が立ち、林道には駐車スペース (7,8台)も整備された。今回、熊沢山を越えないでダイレクトに石丸峠へ行けるこの園地から小金沢山へ登ってみた。
中央高速勝沼塩山ICで降りて20号線を大月の方に引返して甲斐大和の先で景徳院・日川渓谷方面へ左折する。 道なりに行くとやがてトンネルをくぐり、その先で湯ノ沢峠への道を右に分けて左に登って行く。 後は道なりである。やがてダムをグルっと反時計回りに半周してダムに注ぐ沢にかかる橋を二つほど渡り ダムから離れて行くと、林道の左が広くなり、道標の立っているのが見えてくる。 右側には園地の案内板が立ち、石丸峠への登山道が登っている。勝沼塩山ICからここまでは22kmであった。


カラマツ林の林床が熊笹の明るい見通しの効いた斜面の山道に入って行く。上を見上げても斜面ばかりで どこまで登るんだろうと思う。15分も登ると白いカードレールが樹間から見えてきて斜面を横断している 林道に一旦でる。そこから林道の垂直に近い側壁に設けられたクサリ付きの階段を上り、また、同じような山の 斜面の山道をのぼってゆく。側壁の階段で高度を稼いだので、右後の眼下に葛野川発電所のダムの湖面が 樹間からブルーに望まれる。
少し登ると樹間に白い空が見えてきて、前面が開けた見晴しのよいこじんまりした広場に躍り出る。 目の前には狼平から小金沢山の稜線がシルエット状に横たわっている。また、足元をみると終わりかけたヒヨドリソウの 多い草地には意外にもコウリンカが点在している。ここから左へまた樹林帯へ入って行く。この辺から ミズナラ、コナラ、ダケカンバ、白樺の混じる樹林の石の多い道の登りとなる。そのうち傾斜は緩やかになり またカラマツ、熊笹の道を行く。道にはハクサンフウロやコウリンカ、黄色いハンゴンソウが咲いている。
緩やかに登ってい行くとピークらしいところに達し、道は下りとなる。これから下るのかと思ったが、 そうではなく、カラマツと熊笹の斜面を小さなアップダウンを繰り返しながらトラバース気味に登ってい っている。この道は長い。10分くらい歩くと、道はモミジ、モミ、ミズナラの混じる苔むした 石がごろごろ転がる深山の雰囲気のする少し暗い樹林帯に入って行く。モミジが多く、秋はよさそうな ところであろうと思いながら行くと、パッと開け、大菩薩特有の笹の原の大斜面にでる。
今までのカラマツと笹の延々と続いた道は序曲であったのだろうか。大パノラマが展開している。 左の斜面には今まで見たことがないようなコウリンカの群生があり、正面には狼平の芝生の ような滑らかな緑の草原が展開している。さらに、そこから右に青い樹林で覆われた稜線が空に登り小金沢 山でピークに達し、そこから肩を下ろしいている。 その右肩にややかすんでいたが富士山がポッカリと浮かんでいる。さらに右に目を移すと 眼下に展開している伸びやかな笹の原の先に葛野川発電所のダムの湖面がブルーに輝いている。
ここで小休止しながら写真を写す。この辺は本当にコウリンカが多い。今までいろいろなお花畑で コウリンカを見たが、他の花に混じって点在するのがほとんどであった。このようにコウリンカだけが 群生しているのははじめてである。先の見晴し広場にもここのコウリンカの種が飛んで咲いたのだろうか などと思いをめぐらしながら至福のときを過ごす。









明るく開けた伸びやかな笹の原の斜面を横断して行くと 左上からの大菩薩からの道と合わさり、石丸峠についた。ここには道標が立ち、道標にしたがって真っ直 ぐ小菅、小金沢山の方へと向かう。後から人声がする。熊沢山の斜面を二人の女性が下りてきている。 今日はじめて見かけた人である。すこし登って行くと、天狗棚山と支柱に刻まれた道標の立つところに 着いた。そこは牛ノ寝通りを通って小菅・松姫峠に抜ける道との分岐でもあった。写真を写していると 先ほどの女性が追いついてきた。牛ノ寝通りの方に行くとのことであった。










彼女等と別れ、我々は右に稜線沿いに登って行く。トモエシオガマやノコンギクが咲く疎林の笹の道 を登ってゆき後を振りかえると熊沢山の伸びやかな笹の大斜面が大きく競りあがってきている。 登りきると両側が草地の斜面の稜線の道であった。
左側の草地にはハンゴンソウやヨツバヒヨドリなど が咲いている。すぐ下りとなり、正面には箱庭のように美しい狼平の草原を隔ててこれから登る小金沢山が そびえている。下りの草地の斜面は小笹の原で、コウリンカ、ハクサンフウロ、ノコンギク、ワレモコウが点在し ている。また、岩のあるところにはカノコソウが群生している。その斜面の右下にはダムのブルーが光っている。 このような小笹の斜面の花を愛でながら道を下ると待望の狼平についた。













ブルーの空に白い雲が流れ、明るい伸びやかな草原の中にポッンとモミの木 や白樺が少し傾いて立っている。昔、狼が住んでいたのであろうか、モミの木の上に三日月が青く光り、草原 の小高い丘に狼の遠吠えする姿があっただろうか。ロマンを感じさせる。
ここで小休止して小金沢山へ向かう。 小笹の原にはレンゲツツジの株が点在している。花の咲く頃はさらに素敵であろうと想像させる。 疎林の道を登りきると草原のピークとなり、ダムがさらに近づいて湖面のブルーが眼下にクッキリと見える。










今までの伸びやかな明るさとは一転して樹林帯の薄暗い登りとなる。本当に続きの山だろうかと疑いたくなるような 変化である。5分も登ると平坦となって尾根道を行き、先にピークらしきものが見える。 あれかな、と思うが、道はまたまた変化し、石のゴロゴロした木の根の露出した奥秩父の山の雰囲気のような道で 、ピークの右を巻きながら登って行く。
道はほとんど踏み跡を辿れるが石とかで踏み跡も消えているところ があり、そういうところではテープを頼りに進んでゆく。巻き終わって尾根にのり、さらにまた小さな ピークを巻いて尾根にのり進むと倒木の多い苔むした急斜面が立ちはだかる。
これで終わりかと 勇んで登るが、その先、またもや尾根道が続く。またピークが見え、あれだろうかと思って裏切られこと2 回、それを過ぎるとやや平坦な疎林の明るい道になる。そうすると真っ直ぐ行く薄い道が出てくる。 これにはテープはないので見送って踏み跡の濃い左方向へ進む。少し行くとまた分岐となる。 ここは注意を要する。真っ直ぐの方が素直で本道のように思われるが、それは下に下っている。 右のテープが2,3本ある尾根筋の潅木の道が本道であった。潅木のトンネル道を抜けると間もなく枯れ木の林立 する小金沢山の頂上にでた。山頂は周りが木に覆われ余り見通しはよくないが黒岳の方の山の重なりが 眺望された。
昼にはまだ早く、小休止した後、もと来た道を下った。そして狼平で昼食とした。 帰りは花の写真を写しながらのんびりと下り変化の富んだ山歩きを終えた。山で会った人は朝方の女性 二人だけで本当に静かな山歩きであった。大菩薩は人が多いと思うが熊沢山を越えてくる人はすくないよ うである。

(コースタイム)
自宅4:35−相模湖IC5:50−勝沼・塩山IC6:35−石丸峠登山口(P)7:18〜30−林道7:50−見晴台7:57〜8:02− 富士山展望個所8:32〜40−石丸峠8:50〜55−天狗棚山道標(小菅分岐)9:03−狼平9:25−小金沢山10:30〜45 −狼平11:45〜12:10−石丸峠12:55−見晴台13:27〜31−石丸峠登山口(P)13:55
なお、帰りの狼平から石丸峠は写真を写しながらの参考コースタイムです。

(地図)
・昭文社 山と高原地図 「大菩薩嶺」