A.山歩き/2.山紀行/・・御坂黒岳
御坂黒岳

ーースズラン畑からミツバツツジ咲く富士山展望の山頂へーー


明日から3連休である。明後日は笠取山に行くつもりである。その足慣らしとして、 御坂山塊の黒岳の麓、芦川にあるスズラン畑にスズランでも見に行こうと思いたつ。
一応、日帰りの山の準備をしてスズランの写真をとるために車で出発する。 昨夜遅かったせいもあり、出発が遅くなり、通勤ラッシュにあって中央高速相模湖 ICまで2時間もかかった。
一の宮御坂ICからトンネルをくぐって上芦川部落に出て芦川沿いの林道を走る。 芦川は初めてのところである。林道沿いにはアヤメ、アザミなど所々に咲いている。 それを見ながら、花いっぱいのスズラン畑に思いをはせる。 林道は先まで続いているがスズラン畑入り口の駐車場に車を置く。
先に来ている車が2、3台だけで静かなスズラン鑑賞ができそうだ。 スズラン畑方面の道標にしたがって白樺の混じった雑木林の道を行く。 右側はキャンプ場となっていて夏場はにぎわいそうである。
やがて「おでん」などの看板を掲げた茶店が見え、冷たくおいしそうな水が溢れる ようにでている。また、その脇には飲み物を冷やすのに使ったであろう蛇口の2本つ いたステンレス製の流し台があり、 茶店の周りの雰囲気はどうもスズラン祭りの余韻のようであった。
スズラン畑の遊歩道に入ってカメラ片手に戻ってきた夫婦に会った。 「スズランはもう終わったんですか」と話し掛けたところ、 「上の方は少しありますよ」と期待をもたしてくれたが、あたりを見回しても、 ポッンポッンと花を付けているが、それも茶色に変色し、枯れかかっていた。
これでは上へ行っても期待できないと思い、自然と足は黒岳へ向かった。 一緒の家内も何も言わない、黒岳へ登ることを覚悟したようである。
地形図ではスズラン畑を上に突っ切ると先ほどの林道が廻り込んでおり、 突き当たるようである。遊歩道を上へ上へと登ると林道に出て、右にわずかに 上がると三叉路になっていた。 右手の林道は新しくできたようで、「すずらん峠」方向の道標がある。
左手は昔からの道と思われるが道標はない。しかし、地形図を信じて左へ行く。 約100mも行くと黒岳方面の道標が現れた。釈迦岳への道もあるはずであるがない。 どうもバイパスであるらしい。
すずらんの頭だろうか尾根を左手に見て、巻きながら白樺とコナラの混じった 樹間の道を登って行く。緑の樹間に満開のレンゲツツジのオレンジ色が3箇所ほど 見える。 ツツジの群落がこの先にあるのかと期待をもって行くがそれっきりであった。
しかし、ハルゼルが鳴きだし、その声を聞くと緑鮮やかな初夏の山を歩く幸せ を感じる。やがて、釈迦岳からの道となだらかな尾根で交わり、尾根づたいに黒岳 へ向かう。
尾根の樹木はコナラ、ミズナラからブナに、下草はヤブレガサからユキササに変り、 ところどころにシンメトリックな造形を描く珍しいクルマバックバネソウが生えて いる。しばらく行くと急登となり、太い幹のブナが目立つようになり、またユキササ も大型のものになった。下では蕾が開いていたが、ここでは蕾のものがほとんどで あった。
あえぎあえぎ登り、ようやく緩やかな尾根道に到達し、ブナの大木と ヤグルマソウの樹林の道を行くようになる。 御坂山からの尾根かと思ったが、尾根は延々と続く。ところどころピンク色の ミツバツツジが彩りをそえる。散りかけているのが多かったが、 尾根を進むにしたがって花を付けたツツジの木が多くなる。
下草がヤグルマソウからまたユキササに変ると尾根も平坦になり、 御坂山からの道と合さった。避難小屋の屋根が見え、頂上に近い事がわかった。
頂上は木々が円形状に刈り払われていて、ユキササがボツンポツンと花を付けて 生えおり、場違いの感じである。
昼もちかいので弁当でも広げようかと適当なところを探すが、刈り取られたところ が広いため落ち着かない。道標にすずらん峠方面のほかに展望台とある。 展望台で昼飯とすることにした。
展望台への道は樹林の下にマイズルソウが花を咲かせ、しっとりと落ち着いた ところであった。その雰囲気のある道を少し行くと突然樹間にピンク色のカーテンが 見えてきた。
なんとミツバツツジが群生し、花は満開であった。また、ツツジ越しの眼下には 河口湖が広がり光っていた。予想もしていなかったので本当に感動した。 スズランを見れなくてガッカリしていた気分もどこかへ吹き飛んでしまった。 さらに、落ち着いて景色を観察してみると、本来はさらに感動する条件が整っている ことがわかった。それは目の前の富士山であった。
残念ながらこの日は梅雨の合間で時々薄日が差す天気で、富士山は裾野しか見え なかった。 満開のツツジとすばらしい景色を眺めながら昼食を食べ、至福の時をすごした。 今度は是非ミツバツツジが咲き、富士山の見える時来たいものだ、 と思いながらもと来た道を下山した。
(1995年6月16日歩く)

(コースタイム)
自宅7:05−相模湖IC9:16−一の宮、御坂IC9:51 −スズラン畑駐車場10:30−林道黒岳登山口11:10 −釈迦岳分岐11:22−黒岳12:25〜13:00 −林道13:45−駐車場14:05

(地図)
・1/50000地形図 甲府、都留
・御坂黒岳・釈迦ケ岳略図


●追記
  1. 新道峠径由の周回コースを2000年5月末に御坂黒岳付近略図の駐車スペース(P)-3 を基点に歩きました。記事は追って掲載致します。
  2. 新しい林道は新道峠まで歩いて5分位のところまで通っており、駐車スペース も少しあります。
  3. コースタイムは(P)-3から新道峠まで50分、そこから黒岳までゆっくり1時間15分 です。
[山紀行]