A.山歩き/2.山紀行/・・入笠山
入笠山

ーーお花畑の広がる展望の山、周辺の湿原の散策もまた楽しいーー
ーーまた、入笠牧場のレンゲツツジもまたすばらしいーー


入笠山(1999-7-17歩く)
  梅雨の合間をぬって手軽な山、入笠山に登ることにした。車で行く場合、できるだけ周回にしたいが 、どういうコースで歩くか難しいところである。マナスル山荘の前の駐車場に車を置いて、入笠湿原を廻り、 それから入笠山へ首切清水付近を経て周回し、その後、車で大阿原湿原入口まで行き、湿原を一周する コースとした。
樹間の林道を車で登って行くと、大阿原湿原入口くらいから明るくカラマツの茂る道となる。規則正しく 天を指すように林立しているカラマツの美しい風景や、カラマツの下の潅木 が刈り払われて、広々とした公園の森の中のようなところを通過する。やがてスキー場のあるマナスル 山荘に到着するが、山荘の前の道を隔てた駐車場には入梅時とあって一台も車は停まっていない。
林道を下りていって入笠湿原を一周することにする。木道の敷かれたこじんまりした湿原であるが、 白樺にアヤメが美しい。スズランの群生地もあって、初夏(6月中旬〜7月上旬)にはスズランと共にレ ンゲツツジの咲く美しい湿原であろうと想像させる。また、キヤンプ場にもなっており、夏休みはにぎわいそうである。
ここからマナスル山荘の方に戻って、スキー場の右脇を入笠山へ登って行く。左側のスキー場の斜面は お花畑である。フウロウ、アザミ、アヤメ、ギボウシ、ウツボグサなどの花が咲き乱れている。 右側は牧場で、針金の牧柵が山道沿いに登っている。牧場の草原は斜面を下り、反対側の山の広々とした 斜面を這い上り頂上まで続いている。そこには牛が放牧され、のんびりと草を食んでいる。
入笠山山頂まではカラマツ林の道で、結構きついところもある。上に上がるにしたがって草地が多くなり、まだ 早いが僅かにピンク色の蕾を覗かせたヤナギランも見られるようになる。30分も登るとザレ場状の頂上 となる。山頂は遮るものが無く360度の展望であるが、あいにく今日は雲が多く見晴らしは効かない。秋とか 冬の澄み切った青空のときはさぞかしすばらしい眺望だろうと想像される。
山頂の上の部分はガレ場状であるが、その廻りは草原となっていて、色とりどりの花が咲き乱れている。 フウロウ、ウツボグサ、コウリンカ、アザミ、アヤメなどが群生している。写真を写しながら、首切清水 の方に下る。少しお花畑を下ると笹の茂る比較的明るいカラマツ林の道となる。だんだんカラマツが 濃い道となり、しばらく行くと開けてきて林道に飛び出す。
ここを左に折れてマナスル山荘へと戻る。林道から見える小笹の原のカラマツの大木の木立が美しい。道端にはいろいろな花が咲いている。 特にオダマキ、アザミが多い。まだ、早いがヤナギランも結構多く、8月の花の頃は見事でないかと想像 させる。花を観察しながらのんびりと歩いて行くと、まもなく花の咲き乱れているスキー場につく。
入笠山に登る時、右手に見えた牧場のピークが気になり、偵察してみることにした。マナスル山荘の前 の道を少し行くと右手に上っている道があったので、登ってみたが、途中にゲートがあり、通行止めとなって いた。偵察は中止とし、車で大阿原湿原へと向かった。
車で5分くらいで湿原入口に着き、反時計廻り で湿原を周回することにした。しばらく行くが、湿原にはズミの古木はあるものの花は何も無い。白樺が 湿原の縁に点在し、湿原の美しさを保っている。周回して左側に移ると、湿原の奥にレンゲツ ツジの残り花が少し見られた。その付近で昼食とした。その後、沢を横断して周回の戻りコースに入った。 沢には思いがけずクリンソウの残り花が咲いていた。ここからは 大木の茂る樹林帯の道で、ツルアジサイが大木の遥か上まで絡みつき、白い花を咲かせ、 静かな森に華やかさを演出していた。まるで深山に迷い込んだようであった。

(コースタイム)
自宅4:45−マナスル山荘(P)7:50〜8:10−入笠湿原−スキー場9:00− 入笠山9:30〜45−林道10:25−マナスル山荘(P)10:45〜11:15− 大阿原湿原入口(P)11:20−湿原周回−大阿原湿原入口(P)12:30

(地図・ガイド)
・1/25000地形図 茅野、信濃富士見
・山渓アルペンガイド北岳・甲斐駒・仙丈
・略図 下記

●追記
  • この時期はスズラン、レンゲツツジが終わって、夏の花がぼちぼち 咲き始めた頃でした。レンゲツツジの咲く6月下旬とヤナギランの咲く8月頃がよさそうです。
  • 大阿原湿原はズミの古木が多く、6月の花の頃もよいのではないかと思います。
  • 大阿原湿原の反時計回りの周回コースをゆくと、沢のところで、沢沿いの道と沢を横断する本来 の道と分岐しています。私もそうでしたが、沢沿いの道に引き込まれ戻ってきました。間違いやすい ので注意が必要です。
  • 林道はマナスル山荘まで舗装されています。また、駐車スペースはマナスル山荘付近と大阿原湿原入口にあります。
 


杖突峠から入笠牧場(2002-6-16歩く)
定年の身、時間は自由に取れる。したがって混雑する土曜日曜は出掛けないことにしているが、梅雨どき になると、お天気次第なので、そうはいかず今回のように日曜になってしまった。
入笠山付近の地図をみると、杖突峠から千代田湖を経て入笠山までえんえんと林道が続いている。また入笠山スキー 場の丁字路のところに入笠湿原方面を指して高遠方面とある。これは杖突峠まで続いていると思い、いつか走ってみようと 思っていた。今回レンゲツツジの咲く頃を見計らって出かけてみた。
日曜なので久しぶりに朝早く自宅を4:20分に出発した。太平洋沿岸は雲が多かったが、笹子トンネルを 抜けると日差しもでてきた。八ヶ岳SAで持参したおにぎりを食べて腹ごしらいして、茅野ICで降りて 高遠方面の杖突峠へ向かう。峠らしきピークを下り、少し行くと、以前登った 守屋山登山口に着く。
ここでビックリである。守屋山登山口は広く切り開かれて、2,30台位駐車 できる駐車場があり、またレストハウスみたいなものも建っている。2年間で大きな変わりようである。
この向かいの晴ケ峰ゴルフ場への道に左折して入って行く。ゴルフ場入口を見送って下って行くとやがて 丁字路になり、入笠山方面の標識にしたがって左に行く。間もなく千代田湖の開けたところに出る。
千代田湖は白樺の白い幹を湖面に写し静かなたたずまいを見せている。湖畔のレンゲツツジはすでに 終わっているが、黄色のしょうぶんやコンフリの花が咲いている。写真を数枚写したのち出発する。 ゆく道端には紫のアヤメが咲いている。道は舗装されていて良好である。道はカラマツ林が多く、 ところどころに山ツツジが咲いたりして気分を和ませてくれるいる。
1/25000地形図では林道は分岐が多くややこしそうであるが、標識があり、また、舗装されているメイン の道を道なりに行くと入笠山方面へ行く。
千代田湖から40分ほどしたところで、右の奥が開け、レンゲツツジが 咲いている。何と云うところだろうと道があったので入って行く。ほんの少し行って、駐車して散策する。 その場所はカラマツに囲まれた野球場位に大きく開けた草原であった。 草原には、ところどころに白樺やズミが立っており、余り花はついていないがスズランや若草色の幾何学的 な形状をしたシダなども生えている。さらに満開のレンゲツツジが点在し草原に彩りを添えている。 奥に行くと、湿地帯となっている。何か花はないか探すが特にない。湿地帯であるということは 地図でいう「池ノ平」であるようだ。
ここから5分も行くと、真っ直ぐのメインの舗装した道路は高遠方面、左の砂利道は入笠山方面の標識の ある分岐に差し掛かる。マナスル山荘、入笠湿原のあたりは砂利道なので覚悟はしていたが、 今まで舗装であるのには助かった。砂利道もそんなに悪くない。10分ほどで入笠小屋に到着した。 周りはズミやクリンソウが花盛りである。一時停車して写真を写し入笠湿原へ向かう。
入笠湿原には9:30に着いた。湿原を一周することにして登山靴に履き替えカメラを持って 出かける。さすがに今まではほとんど人とは会わなかったが、車も人も多い。白樺の点在している湿原には クリンソウとレンゲツツジが彩りを添えている。時々ガスが流れてきて幻想的な風景を作り出している。 また、ズミの真っ白な花もガスと同化してまた幻想的で美しい。湿原の脇の草原には小さな紫の アヤメが咲いている。また、キンポウゲだろうか小さい黄色い花も群生している。
一周しているうちにツアーの団体がどんどん押し寄せてくる。これはかなわんと、早々に退散する。 入笠山に登ろうと思ったが、これまた人人人である。そこで、あてがあるわけでないが、今まで行ったこと のない牧場の方に行ってみることにする。
マナスル山荘の前の道を進んで行く。右手の牧場の牧草地を過ぎると、ウソのような静けさである。 最初はガタガタ道で先が思いやられたが、200mも行くと砂利道であるが道はいい。何のあてもなく道なりに進む。 しばらく行くと、道は舗装に変わる。そうすると右側の斜面では乳牛がのんびりと草を食んでいる。牧場に突入 したようである。さらに行くと道は右手に高遠、真っ直ぐ長谷村とあり、前方の山の斜面がレンゲツツジで 赤く染まっている。
レンゲツツジでも見ようと真っ直ぐ行く。途中軽トラの荷台に「牛放牧中につき 徐行」という 看板を載せているおじさんと会う。ますます、牛の数は多くなり、牧場の真っ只中を行く。 左側の牧草地の斜面には「この木なんの木」のような木が何本かあり、写真の被写体にいい、帰りに写すこ とにしてそのまま通り過ぎる。間もなく道は前方で牧場のゲートとなる。その手前に右に直角に分かれている 道もある。そのあたりは草地の広場になっていてレンゲツツジを見ながらお弁当でも広げるのに丁度良いところである。 多摩ナンバーの車が一台広場に止まっており、3人家族がお弁当を広げている。その1組だけで、湿原あたりと比較すると ウソのような静けさである。
我々も右の道に入る。この道も前方で牧場のゲートで行き止まりである。その付近は農協キャンプ場になっており、 管理棟であろうか農協ハウスという建物が建っている。キャンプ場の近くに車を置いて、チョッと物足りない ので散策することにする。
丁度「牛放牧中につき徐行」の看板を掲げた軽トラのおじさんが戻ってきたので、 「このゲートの先に行ってもいいですか」と話したところ、昨日はダメだったが今日はいいとのことである。 何故かわからない。あてがあるわけでないが行ってみることにする。何かいい被写体があるかもしれない。
ゲートの隙間から中に入る。トラック道は左に上がっている斜面をトラバースしながら緩やかに登っている。 道には牛の糞が多い。といってもほとんどは乾燥している。登るにしたがって右側の下っている斜面の牧草地には白樺 が点在し、谷を挟んで向こう側にも牧場の斜面が見える。近くをカッコーが鳴きながら飛んでいく。道は左に上ってUターンする。そのあたりも レンゲツツジが多い。さらに左に上って行くと美ヶ原でいう「塩くれば」となっていおり、コンクリート製の U字状の容器が置かれている。そのためか、そこら付近にはおびただしい糞が転がっている。トラック道は 左に下り気味に行っている。我々は下らないように右の道らしきところを進んで行く。そうすると沢の源流のような 大きなV溝のところに差し掛かる。この辺にもレンゲツツジが多い。右上を見るとズミであろうか 潅木の隙間を通してレンゲツツジの赤と空が見える。もう稜線も近いと考え、ズミの潅木の獣道ならぬ牛道をたどって 上に登ってみた。
ズミの木の下をくぐり抜けるとそこには別世界があった。上を仰ぎ見ると牧草地の牧柵が並び、その上に広い空があった。そして ミズナラであろうか高い高い大木が一本立っている。その下に真っ赤なレンゲツツジが咲いて彩りをそえている。左側を見ると 斜面には白樺が茂り、白い幹と燃えるようなレンゲツツジのコントラストが美しい。
さらに牧柵まで登ると その向こうも広々とした牧場が広がっていた。白樺や「この木なんの木」のような大きなズミの古木がに立っている。 それから牧柵沿いに左に上って行くと向こう側の牧場の牧草地にテンのような動物が夢中に地面に顔を突っ込んで、何か食べ物を 探している。惜しいことに望遠レンズを用意しているうちにどこか行ってしまった。そこは本当に自然の楽園のようだった。
牧柵は平坦な尾根の上まで上がり、そこからまた先で斜面を下っている。この平坦な尾根の上はズミの木が多く (少しは花は残っていたが、終わっていたものが多かった。)、木々の間に真っ赤なレンゲツツジが点在している。また、斜面は牧柵の中までレンゲツツジの原で真っ赤に燃えている。 所々に大きな白い石が点在し、レンゲツツジとよくマッチし自然の庭のようである。
この付近までは牛はこないらしく糞は見当たらないので、この斜面でお弁当を広げることにする。 ここは地形図でいうと1806mの三角点の近くのようである。正面には入笠山と首切清水の上のアンテナ 塔が立つピークが見える。本当に隠れレンゲツツジスポットでよいところあった。
帰りはもと来た道を写真を写しながら戻った。 キャンプ場までは下り15分であった。登りは道草を食って計っていないが30分弱程度と思われる。 昨日いけなくて今日よいというのは、もともと牛はこの区域に放牧されていて、今日からあちこちの 放牧地に移され、牛がいなくなったからのようである。本当にいい時に訪れることができて幸いであった。

(コースタイム)
茅野IC7:12−守屋山登山口7:28−千代田湖7:35〜50− 池ノ平8:35〜9:00−入笠湿原9:30〜
11:05−(スキー場で花観察11:20)−農協キャンプ場(P)11:30−牧場(1806mピーク付近) −農協キャンプ場(P)12:45

(写真)
「フォト紀行」 杖突峠から入笠牧場をご覧下さい。下の写真は牧草地を駈けていたテンに似た小動物です。


●略図

●追記
  • 農協キャンプ場の奥の牧場に入るには農協ハウスの人の許可を得たほうが良い。
       時期的にはズミの咲く頃とレンゲツツジの咲く頃と思われる。

    A-2[山紀行]へ戻る