A.山歩き/2.山紀行/・・大マトイ山
大マトイ山
ーーブナ、ミズナラ、カエデなど自然林の美しいプロムナードコースーー
大マトイ山(2000-11-4歩く)
数年前に姥子山に登ろうとした折、帰りに松姫峠を車で越えて小菅に下り、
そこから上野原へ戻ってきたことがあった。その時の葛野川渓谷の紅葉がすばらしかった。それで、
また行ってみることにした。ついでに近くの山に登ってみようと思って地形図を調べたとこ
ろ手ごろな変なカタカナの名前の大マトイ山があったので登ってみた。
いや、登るというより稜線歩きといったほうが近いし、また、大マトイ山自身は三角点
があるにもかかわらずピークが判然としないで三角点が見つからなかったので、山頂の脇を通ったというのが正直なと
ころである。
自宅を4:45に出発し、大月ICを6:25に通過して、岩殿山の下を通って139号線に入る。葛野川発電所
の工事が大分前から行われており、もうそろそろ終わっているだろうと思って行ったが、竹ノ向
から葛野川橋までは従来の細い道で、工事用車両が通るらしく舗装道路は泥だらけであった。
しかし、右側の山の斜面上に建設されているバイパス道路はガードレールも取り付いているようで、
今年中には完成しそうである。
橋を渡ると道は新しくなり、奈良倉トンネルを通って高度を上げてゆく。以前来た時はトンネル
付近の紅葉がすばらしかったが、今年は暑さがいつまでも続き、紅葉は遅れていて、一週間後くら
いが丁度のようである。しかし、さすがに高度を上げて峠近くになると紅葉が見られるようになり、
峠では真っ盛りである。
峠には車を7,8台置けるスペースがあり、既に3台ほど駐車している。武田信玄の6女
松姫が、天正10年武田勝頼滅亡時、この峠を越えて八王子へ逃れた由来でその名がついた松姫峠。
ここは正真正銘の峠で、本当にピークになっていて太鼓橋のようである。小菅の方から峠に向って
歩いてくるハイカーを葛野川の方から見ると、最初顔が見え、だんだん全身が現れて大きくなってく
る。一度そういう写真を写したいものだと、ここを通るたびに思っている。
身支度をして8:30に出発する。しかし、道標はなく一瞬戸惑うが、小菅側に少し行ったところの左側
に広い道が上がっていたので、それに間違いないと思い登ってたゆく。
最初の登りは木々が伐採され、展望もよく、小金沢連嶺の山々の上から富士山が顔を出している。
この時期だと雪を頂いた富士山のはずであるが、今年はいつまでも暑く真夏の富士山のように黒いシル
エットである。
すぐ、平坦な樹林帯の道となり、樹間のところどころにカエデであろうか、真っ赤な紅葉が逆光
に輝いている。今日はすばらしい紅葉が見られるだろうと期待しながら行く。
やがて、道は尾根の右側を巻いて行くようになる。コナラの自然林で、細いコナラの木々が整然と
並んでいる気持ちの良い道である。ここを過ぎると前面に尾根が横たわり、それを登ってゆくのかと思っ
たら何時の間にか右側を巻いて越えている。
この辺にくると木々はコナラ、ミズナラ、ブナの混じる樹林帯の道になるが北側のせいか今ひとつ明る
さがない。やがて道は二又に分かれているところとなる。標識があり、山沢入1285mとある。ここで、念
のため地形図とコンパスを出して方向を確認して、踏み跡の濃い左側へ90度曲がるように入ってゆく。
この左側の尾根のピークが鶴寝山と思われる。
左側の道はカラマツ、ヒノキの植林帯であるが、すぐ抜け、コナラ、ミズナラ、ホウノキなどの雰
囲気の良い樹林帯に入り、尾根を左に見ながら巻いてゆく。ほどなくまた右下への分岐がある。
木にテープが張ってあり、それにはマジックで田元橋へ1:30とある。これはどうも小菅の方に下る道のよ
うなので、まっすぐ巻き道を行く。大マトイ山まで分岐で迷いそうなのはこの二箇所だけである。
やがて、ブナの大木などが現れ、一旦左にカーブしたのち右にカーブし、左側の斜面が緩やかになり、
広々とした平坦な樹林帯の道となる。あちこちにブナの倒木があって、ヌメリツバタケが生えており、夕飯
の鍋の具に戴く。そこから下るようになると下草は小笹に変わり、広々とした鞍部になる。そこには山火事
注意の立て札が立っている。
ここより登り一方となり、7,8分登ると「林班界標小菅区分13/14」の標識がでてきて、だんだん
山が深くなる。ブナ、カエデ、モミジなどの大木が現れ、本当に好ましい雰囲気の森である。巨木の枯れた
立ち木があったり、鳥居のようにトンネルを作っている倒木が現れたりする。
上を見ると黄色、朱色、紅色と紅葉した木々は高く、青空に映えて美しい。右を見ると紅葉の樹間か
ら奥秩父の山々がガスの上に浮かんでいるのが見える。そしてその山々はいつまでも友ずれでついてくる。
やがて道は平坦になり、そろそろ大マトイ山だろうと標識や踏み跡がないか気を付けて進んでゆく。
しかし、何もない。そのうち道は左に90度折れ、「林班界標小菅区分14/15」の標識が立っている。
そしてカラマツの植林帯に入ってゆく。10分ほど行ってみるが、どんどん下っており、どうもおかしい。
これでは大ダウへ下ってしまいそうなので、引き返すことにした。
9:40である。
また、90度に
折れるところで、右側を確認するがやはり何もない。そのうち、中年の男性が3人ほど登って来たので
大マトイ山を訪ねたところ、もう、とっくに過ぎて大菩薩の方にだいぶ来ている、とのことである。
違うと思ったが、そうですか、と挨拶して別れた。まもなく、今度は大ダウから登ってきたという中年の
男性に追い越された。この人にも同じく聞いたところ、90度折れ曲がったところである、とのこと。
ようやく、間違いなかったと納得する。
ブナの大木の茂る道をのんびりと下ってゆくと、鳴き声は低いが、チィチィチリチリ−−−−−−−−と、
小鳥の大群が頭上で鳴いている。上をみると高いブナの黄葉の梢を小鳥の大群が飛び交っている。小鳥が
飛び交うたびに何かバラバラと木の上から地上に落ちてくる。よく見るとそれはブナの実であった。
初めての体験である。今年はブナの実の豊作の年なのであろうか。
しばらく下るとまたそういうところが2ケ所ほどあった。
豊かな広葉樹の森を、実りの秋と紅葉の秋を満喫しながら、のんびりと下り、峠の手前のモミジの
美しい樹林の中で昼食を取り、峠には12:30に戻った。
この尾根は「牛ノ寝通り」と言われており、牛の背のようになだらかな尾根で、自然林が豊かで、
本当に気持ちの良いプロムナードコースである。春の新緑の頃もよさそうなのでミツバツツジの咲く頃にでも、
もう一度三角点探しに出かけたいと思っている。
(コースタイム)
松姫峠から休み時間、道草の時間も入れて片道1時間30分もあれば十分です。
(地図)
・1/50000地形図 丹波 これでは大マテイ山となっています。
・昭文社 山と高原地図 大菩薩連嶺
●追記
大マトイ山の紅葉の写真はHPの「光の写真館」に載せてあります。
「木洩れ日のある風景」の”ブナの倒木に散るもみじ”と「車窓を流れる風景」がそれです。
大マトイ山の紅葉は例年だと10/下旬頃と思います。