A.山歩き/2.山紀行/・・大鹿山
大鹿山

ーーある晩秋の日、落ち葉を踏んで尾根を歩くーー


もう、秋も深まり、山の紅葉は終わりだろうが、里の紅葉は残っているかもしれ ないと、甲斐大和村の大鹿峠付近を歩いてみることにした。武田勝頼の菩提寺である 景徳院の前の駐車場に車を置き身支度をして出発する。
大鹿峠への入り口は分かりにくいとガイドに書いてあったので、地形図を慎重 に読み、右手上の民家のある方に雨沢の橋を渡っ登って行く。 途中、先ほど駐車場付近で犬の散歩をさせていた娘さんと会う。大鹿峠への道を尋 ねたところ、民家の庭を通るがその入り口には目印の道標があるとのことであった。
道なりに登っていくと民家の屋敷の入り口に道標が立っている。2軒の民家の 庭先を登ってゆく。すると鳥居があり、やがて、赤い屋根の氷川神社の脇を通る。 杉林の急登であるがカラマツの落ち葉もあり、カラマツも所々にあるようだった。
やがて右に谷を見ながら、コナラなどの雑木林の道を緩やかに登って行く。 振り返ると雪をかぶった南アルプスの山々が雲海の上に浮かぶように見える。 ひと登りすると平坦になり、鉄塔のある広場に出た。そこで一休みする。
ここから鉄塔と送電線と共に登る道となるが、間もなく平坦になり、 コナラ、クヌギの落葉をカサコソと踏みしめながら行く。 落ち葉を踏みながら歩くのが心地よい。若い時は春がよかったが、年取ると だんだん秋にフイーリングが合ってくるのだろうか。
登り一方と思ったが今度は若いヒノキの植林の中の道を下る。しかし、前を見 ると鉄塔の立つピークが見え、下ったと思ったら、すぐ落葉したコナラ林の中の 道をジグザク登る。
登りきるとモミの木のあるやせた尾根を緩やかに登るようになる。 やせ尾根が終わるとまた、コナラ林の中の登りとなる。途中、 冬枯れの木立の中にピンクにひときわ目立つものがあった。狂い咲きのミツバツツジ であった。
ようやく着いたところはチョッとした広場でNO69鉄塔が立っていた。 ここで小休止する。
また行くと前方上に鉄塔が見える。右を巻くように鉄塔に近づ くと道標が見えてきた。稜線に達したようだ。
出発してから1時間と30分くらいでほぼ予定通りである。大鹿峠と思ったが 違っていた。峠は右下遥かに下ったところで、お坊山はそこから急峻に立ち上がっ て我々のところより遥か上に見える。
お坊山に登るとなると、折角登って来たのを下ってまた登ることになる。 帰りも繰り返さなければならない。お坊山もついでに登るつもりであったが、 なんとなく気が進まない。家内もお坊山の登りはいやそうだ。
結局、左に行き、大鹿山を経て景徳院から3本上って来ている道のうちの真中の 尾根道を戻るコースをとることにした。
左に行くとすぐ鉄塔広場に出た。見晴らしが良く、また小休止する。 大鹿山への道は落葉で埋まり判然としないが、先々を見て見当をつけながら進む。 一旦下って急登となり、ようやく登りきったところに、純白の真新しい角柱の 道標が立っていた。大鹿山1236mとある。
見晴らしが良く左側には南アルプスが見え、その反対側には本社ケ丸あたりだ ろうか大きな立派な山が見える。
ここから平坦な快適な尾根道歩きとなるが、すぐ下りとなり、今日下る予定の 景徳院への道を左に探しながら行く。
道標はないが、地形図のように左から斜めに交わっている道がある。 これに間違いないと確信し、左に入る。少し行くと右側の視界が開け、コンドウ丸 が真近に大きく見える。時間を見るとまだ10時である。折角ここまで来たので 寄ってみることにする。
また、尾根道に戻り、オン立ての左を巻きながら斜面の細い道を行くと曲沢峠に 着いた。そこには登山者が一人休んでいて地図を広げていた。その地形図は赤鉛筆の 歩いた印で赤く塗りつぶされていた。この付近を集中的に歩いている人らしい。
聞くところによると時々山の記事を朝日新聞に投稿しており、今日は、 まだ笹子から曲沢峠まで歩いていなかったので歩いて来たとのことであった。
挨拶してお先にコンドウ丸に行く。だんだん登るにしたがってコナラ、ミズナラ の道からカラマツの道となる。一旦平坦になり、道は右に折れてまたカラマツ林の 中の道を登る。
ほとんど平坦になり、頂上と思われるが道標はない。三角点みたいな四角い石柱 があったのでこれが頂上かと一休みする。
念のために空身でさらに先にいってみるが道標はない。さつきのところに間違 いないと確信する。小休止して、もと来た道を帰ることにする。
途中、曲沢峠で一緒だった人と会った。コンドウマルはよくわからなかったの では、とたずねられた。どうももっと先のほうらしい。
まあ、近くまで来たのでヨシとする。来るとき確認した景徳院への道を曲沢峠 の先で右斜めに入る。
少し行くと前方の視界が開け、雪を頂いた南アルプスの山々が浮かんで見える。 さらに下ると左右の冬枯れの樹間から谷を経だてた向う斜面に紅葉が見えてきた。
道はカラマツの若木のところを下るようになり、それを過ぎると右側は伐採地 になり思いきり開け、谷の向うに大谷ケ丸と、そこから伸びている尾根が見渡せられる。 尾根の標高の低い方は紅葉が真っ盛りで、紅葉を眺めながら昼食とする。
この尾根の伐採地はさらに下へと続き、左右の山々の紅葉を愛でながらルンルン 気分で下る。
やがて、展望のきかないヒノキの植林地に入る。しばらく下っていくと田野部落 が見えてきて、梅林などの脇を下ると景徳院の後に出た。
景徳院の庭の紅葉や仕立てられた菊の花、生害石などを見学して駐車場に戻っ た。
(1996−11−10歩く)

(コースタイム)
自宅5:25−景徳院7:30〜40−稜線9:15〜30−大鹿山9:45− 曲沢峠10:10−コンドウ丸付近10:30〜45−曲沢峠11:00− 景徳院13:00

(地図)
・昭文社 山と高原地図 大菩薩連嶺
・1/25000地形図 笹子