A.山歩き/2.山紀行/・・笹子雁ガ腹摺山
笹子雁ガ腹摺山

ーー山を下りて笹子トンネルを抜けると桃源郷があったーー


5月連休は笹子あたりの山々はミツバツツジが見られる頃である。 万が一咲いてなくても富士山はが眺められるだろうと思い、笹子雁ガ腹摺山 に登ることにした。
中央高速を大月で降りて甲府方面へ行く。笹子川の橋を何回となく渡り、満開の 桜の咲く笹子鉱泉を過ぎると、まもなく笹子峠方面の標識が見えてきた。 国道から左側の旧道に入る。
最初、杉林の林道ふうの道であったが、そのうち広葉樹の雑木林の中の道となり、 しばらく行くと矢立の杉の案内があった。傍には、矢立の杉を見学に行ったのであろ うか、バイクが4、5台おいてあった。
くねくね高度を上げてゆくとまた矢立の杉の案内があった。今度は矢立の杉の 上に来たらしい。
行く舗装道路上のところどころには小さい落石が転がっている。周りの木々の芽 は固く、緑は見られない。もう、5月というのに冬の林道を走る感じである。
まもなくトンネルの入口が見えてきた。右側には駐車スペースがあり、既に 川崎ナンバーの車が置かれている。時間をみると丁度8時である。
早速、身支度してトンネルの右側の踏み跡をたどる。正規の道で無いらしく 細かいザレの坂で滑りやすい。木につかまりながら登ると、鞍部にでた。そこには 笹子峠の標識があった。
さらに、その右手の方に木につかまりながら急登すると尾根らしいところ になった。 すこし行くと左手から広い道が登ってきて合わさった。トンネルの反対側から登るの が正規のようである。
この付近は鞍部になっているため風の通り道になっていて冷たい風が吹き抜け て寒い。しかし、尾根の右斜面を行く巻き道に入ると風は収まり、暑いくらいである。 登りで足場の悪いところには黒いプラスチック製の階段が埋められ、段差も少なく歩き やすく、また、両側が切れているやせ尾根にはロープが張られ、手入れが行き届いている。
足元を見ると、ところどころにスミレが咲いていて、和ませてくれる。
やがて、正面にピークが見え、手前には送電線の鉄塔が立っている。道は鉄塔を 通ってピークの右側を巻いている。さらに行くと2本目の鉄塔が見えてくる。
そこは石垣で整地され、休むのに丁度よいが、まだ早く、そのままミズナラなど の林の巻き道を行く。ところどころにツツジの木が見られるが花はまだ咲いていない。
しばらく行くと、ようやく冬枯れの木立の中にピンクのツツジの花を見つけた。 これから見られるだろうと思ったが、頂上までツツジの見られたのはここだけであ った。花としてはフジザクラであろろうか桜のような花をまばらに付けた木が あつた程度であった。
冬枯れの見通しのよい樹林の中の巻き道をゆくと、御坂の山の上に富士山 が顔をだし、だんだん裾野を広げながらずっと付き合ってくれる。
やがて松の混じった林の巻き道を行くようになり、それを抜けると視界が開け、 木のほとんど無い鞍部にでた。そこには送電線の鉄塔が立ち、太陽光発電のパネル を屋根に取り付けた実験小屋が建っている。視界をさいぎるものは何も無く気持ち のよいところであった。正面を見上げるとこれから登る頂上が見える。
今回のコースでの登りはトンネルの取付点とこれから登る頂上への登りだけで 気楽に歩けるコースであった。 今までの寒い日がウソのように暑い中を夏山みたいに汗をかき、頂上への最後 の急斜面を登る。
突然、上の視界が開け、三脚が見え写真を写している人も見えてきた。 そこが頂上であった。頂上広場は細長く、右の笹子の方に伸びている。笹子の方の端 に腰をおろし休憩する。
正面には富士山が見え、眼下には笹子トンネルに入る国道のカーブが見える。 三脚を立ててあった頂上付近からは真っ白に輝いている南アルプスの山並がみえ、 北側を見ると小金沢連嶺、大菩薩の山並が眺望される。
休憩した後、富士山の写真を写し、もと来た道を下る。50分位でトンネルの 脇の駐車場に着いた。思ったより早く、まだ10:20である。昼食にはまだ早い、 旧笹子トンネルをくぐって大和村へ抜けることにした。
舗装の道は笹子側より広くてよい道である。桜並木がところどころにあり、 桜は満開である。予想外のお花見ドライブとなった。
だいぶ下ると、今度はピンクの桃の花が眼下に見えてきた。山裾の緩やかな斜面 がピンクや白に染まっている。そこにはのどかな桃の花咲く美しい田舎の原風景があ つた。
ガイドブックでは4/中旬ごろ釈迦堂遺跡博物館のあたりが桃の花が多く桃源郷 になるとある。このぶんなら今年は寒く、まだ桃の花が咲いているかもしれないと 思い、釈迦堂へ向かう。
若千遅い感じであるが、山の麓の方は一面ピンク色に染まっている。 茶臼山方面へ細い道を上って行き、適当なところに車を置き、弁当を広げ、桃の花見 とした。
ピンクの桃の花の下は一面黄色いタンポポの絨毯である。このコントラストが 本当に美しい。今年は寒く、山ではミツバツツジや新緑が見れなかったが、1度は 見たいものだと思っていた桃源郷を見ることが出来て、幸運な山歩きてあった。
(1996−4−29歩く)

(コースタイム)
自宅5:45−笹子トンネル登山口8:00−頂上9:10〜9:30− 登山口10:20
(地図)
・昭文社 山と高原地図 大菩薩連嶺
・1/25000 地形図 笹子

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