A.山歩き/2.山紀行/・・白砂山
白砂山

ー深山の趣のする樹林帯からガスを伴った強風吹きすさぶお花畑を急登するー



白砂山(1999-8-3歩く)
折角の夏休みなので日頃なかなか行けない花の山、白砂山へ行ってみることにした。 しかし、行程が長く、もし登山口に10時近くに着いたら、エビ山や八間山を廻る ことで出発する。
自宅を3時50分に発つ。始めて関越に入るのに東名を使って行く。ウイークデイ のせいかトラックが多い。練馬ICには第3京浜経由より約30分早く着いた。
その後、上里SAで朝食とし、渋川伊香保ICで降りて草津方面へ向う。 道は空いていて、順調に走り、8時20分に野反湖湖畔の登山口に着いた。 登山口にはウイーデイのせいか車が一台も停まっていない。登るのは我々だけかと 思って出発する。
山は上のほうがガスっているようだ。 しかし、天気予報は晴れであるので安心して歩き出す。白いアジサイに似た花が 満開である。ダケカンバの木と共に豊かな樹林帯に彩を添えて深山の雰囲気を演出している。 良い山に来たなあと、しみじみと思う。
やがて下りだしてハンノ木沢に懸けられた丸太橋を渡る。渡りきるといよいよ 登りとなる。途中、沢で水を補給する。ジグザグしばらく登ると尾根に出て 白いアジサイに似た花の多い平坦な道を行く。そのうち一度は訪れてみたい 憧れの秋山郷(切明、秋山方面)への道を分けると、白樺の多い登りとなり、 少し開けて眼下に野反湖が見えてくる。
更に笹の原に白樺の点在する道を登ると右手前方が開けてきて、八間山の稜線であろ うか山並みが展望される。ここが地蔵山である。 これより樹間の中を小さなアップダウンを繰り返しながら行くと、左手が開けて鳥甲山らしき 山が見えるところに到着する。山を眺めながら小休止する。
ここより樹間の急登 となり、登り切ると近くに水場があるらしい平坦地に着いた。そこには思いかけず 中年の男性1人が休んでいた。朝5時にでて、もう登って戻って来たとのことである。 上の方には7〜8人いるとのことで、登山口には車がなかったのに予想外に多くの人 が登っているのには驚いた。野反湖ロッジに泊まって、車も置いて、早朝出発したの ではないかと思う。
こんどはV字状のガラ場の道を登り、さらに樹間の登りとなる。 そこで、中年の男性1人と女性4人のパーテイとであった。八間山分岐からのアップダ ウンの多い道にはヘキヘキした様子で分岐から頂上まで1時間10分のところ1時間 30分掛かったとのことである。いよいよ森林限界のアップダウンの多い登りである。 頑張らなくては、と思いつつ登ると、あっさり、変哲もない堂岩山についた。 そこから少し行くと樹林帯は終わり、草地の中の八間山分岐となった。
遮るものがなく、ガスを伴った風が吹き上げてくる。ほとんど眼下も白砂山の方も視界は きかない。横から強風を受けながら草原状の道を下る。途中単独行の男性1人と女性1人と 会った。下りきると痩せた稜線のハイマツの狭い道となり、右手からの横風が 相変わらず強い。そのうち道は北斜面に入り、風が遮られてホッと一息する。 そこら辺はクロマメノキが多いが実はほとんど付いていない。
樹間の小さいアップダウンや、風の当たらない北側斜面の道を行くと、 最低部の鞍部らしい樹木がまばらに生えている道で単独行の中年の男性と会った。 まだ、二人ほど頂上に居るとのことである。
いよいよ樹木のない稜線の登りに掛かる。 ガスを伴った強烈な風が斜面を駆け登り稜線を横切ってゆく。 しばらく登るとガスの中から下山してくる50才位の夫婦が現われた。これからどれ くらい掛かるか尋ねたところ、もう一山を越えなければならないので、相当かかると いう。また、途中、余りにも頂上に辿り着かないので引き返そうかとも思ったとの ことであった。
高度が上がるにしたがってガスはますます濃く、風も強まり、視界が悪くなる。右側の 斜面はお花畑となり、フウロウ、ウツボグサ、クルマユリ、マルタダケブキ、ギボシなどの 花が強烈な風で激しく揺れ、草や潅木も一斉におじきをする。
お花畑の道をあえぎあえぎ急登すると、 激しく流れるガスの切れ間から、遥か上に山頂らしきピークが見えてくる。それが だんだん近ずいてくる。もう山頂かと思ったが時間的に早過ぎる。登り切って みると、やはり山頂でなく、傾斜は緩くなったがガスの中に道が続いている。 ガスで先の道が消えているので、如何にも先はもう山頂という感じである。 もう頂上に違いないと何回も思ったが、なかなか山頂に到着しない。
周りはお花畑である。物は考えよう、お蔭で花を長く愛でられる、と思ったり しながら、黙々とあえぎなから登る。そうこうしているとガスの中の前方の草地と空との境が ハッキリしてきた。さらに、草地の上の空に標識板の頭が現われ、大きくなって 来た。
やっと頂上に着いた。13時2分であった。4時間30分かかった。そこは三角 点と白砂山の案内板と皇 太子殿下登山の説明板があるこじんまりした平坦な広場であった。どうも我々が今 日の登山のしんがりのようである。ガスはますます濃く、風は強烈になって来た ので、早々にパンとお握りで腹ごしらえをして、写真を写して、13時15分には山頂 を後にした。
帰りはガスが濃く視界が殆ど効かない。足もと近くの花に励まれながら手探り 状態で下る。帰りは楽と思っていたが、アップでは疲れたせいか登る時より のろのろ状態である。小さいアップダウンをこなし、ようやくハイマツの痩せた 稜線の道に辿りつくと最後のアップが待っていた。
潅木の道を登ると草地の斜面の トラバース気味の登りの道となる。遮るものなく強烈な風がガスを伴って吹きあげ てくる。先が見えない。この強烈な風の中をどれだけ登るのか分らない。 突風時には屈んで身体を風にそむけながら、あえぎあえぎ登って行くと、ガスの中 にかすかに道標が見えて来た。道標のあるところというと樹林帯に近い八間山分岐 である。しかし、ガスで樹林は見えない。本当に八間山分岐なのかと一瞬疑った程 であった。近づいて見ると確かに八間山分岐であった。もう、強風に吹かれること もないのでホッとした。
それからはのんびりと休み休み下る。ハンノ木沢では冷たい沢の水で顔を洗い サッパリした気分で、今夜泊まる湖畔の野反湖ロッジを見下ろしながら下った。 アジサイに似た白い花が西に傾いた日差しに照らされて 美しい。また、野反湖は山頂附近の強風がウソのように静かにたたずんでいた。
なお、アジサイに似た白い花は、家に戻ってから調べたところノリウツギである ことがわかった。

エピローグ(1999-8-4)
翌日、8:00にロッジを車で出発した。ロッジの周りはお 花畑で、ヤナギランも咲き始めていた。ゆっくりと湖畔の風景を見ながら行く。 アジサイに似たノリウツギの白い花、ピンクの野アザミ、ヤナギランなどの花々が 朝霧の漂う湖の風景とマッチして美しい。 また、通る車は殆どなく、野ウサギの子供が車の前をピョンピョンと横断したり、キジバトが道路 で餌をついばんでいたりしている。
野反湖の自然を満喫した後、嬬恋から湯の丸、池の平、 高峰温泉、車坂峠と周り、佐久ICから関越で戻って来た。
池の平から高峰温泉間は土、日、祭日は一般車通行止めで、シャトルバスが走って いるようあるが、当日はウイークデイであるため車で廻ることが出来た。 車坂峠附近はヤナギランが咲き始め、ニッコウキスゲ、ツリカネニンジンの花が 満開であった。

(コースタイム)
自宅3:50−関越入口5:00−渋川IC6:34−白砂山登山口8:20 〜35−ハンノ木沢8:50−水場10:55−堂岩山11:33−八間山分岐 11:40−白砂山13:02〜15−八間山分岐14:40−登山口17:20

(地図)
・1/25000地形図 野反湖
・ガイドブック「関越道の山88」打田著 白山書房
・高低図 下記


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