牛奥ノ雁ガ腹摺山
(うしおくのがんがはらすりやま)
霧に煙る幻想的なお花畑と広葉樹林を経て
開放的で伸びやかな牛奥ノ雁ガ腹摺山へ




賽ノ河原から牛奥ノ雁ガ腹摺山を望む


牛奥ノ雁ガ腹摺山(03-08-30歩く)
小金沢連嶺の黒岳、牛奥ノ雁ガ腹摺山は、1994-10-16に黒岳に登るつもりで行って白谷 が丸で猛烈な風に出会い撤退を余儀なくされて以来、手つかずのままであった。 先日の8/21、石丸峠から小金沢山に登ったので、その勢いに乗って今度は湯ノ沢峠から 白谷が丸のお花畑の偵察も兼ねて黒岳、牛奥ノ雁ガ腹摺山へ登ってみた。
牛奥ノ雁ガ腹摺山の牛奥というのが気になった。地図を調べたところ嵯峨塩鉱泉の 集落が牛奥というところであった。雁が腹を摺るように渡る、今では水場があり賽ノ河原と いわれている鞍部の笹の原が、奥牛ノ雁ガ腹摺原と呼ばれていて、その上の牛奥ノ雁ガ腹摺 山は後から付けられたことのようである(*1)。




大蔵高丸あたりは秋の花の時期でもあり、また夏休み最後の土曜日なので、きっとにぎわ い、湯ノ沢峠の駐車スペースも混雑しているのではないかと思っていたが、駐車していた車は2台 のみで、予想外であった。静かな山歩きが楽しめそうだ。早速身支度をして湯ノ沢峠へ向かう。 1年ぶりの懐かしい湯ノ沢峠に着いてみると、足元の草むらにはクガイソウ、トモエシオガマが咲いている。 この時期に歩くのははじめてであり、花の様子はどうなのか気がかりであったが、秋の花が丁度よく咲い ている。この分だと白谷が丸のお花畑も花盛りであろう思うとわくわくしてくる。
気が急くのを抑え、白ザレを右に見ながら1歩1歩登って行く。道にはマツムシソウが丁度見ごろの状態で 咲いている。30分余り登ると一旦平坦になり、草地となる。ガスが上って来て視界は効かないが、ガスに煙る 樹木やマツムシソウが幻想的で美しい。すぐまた同じような白ザレの脇の登りとなり、ひと登りすると樹林帯 の平坦地に到達する。ここまで登ると後は楽である。
ここからチョットした下りとなる。右の眼下には白ザレの後では予想も出来ない草原が広がっている。 右奥には半島のように飛び出たケルンのあるガレ場の展望台がある筈であるがガスって見えない。 すぐ平坦になり、道の脇にはヨツバヒヨドリ、マツムシソウ、ハンゴンソウ、ヤマシロギクが咲き、またヤナギランも僅かであるが 残っている。この辺は風の通り道になっていてひっきりなしにガスが上がってくる。
今度は登り返して平坦となり、さらに緩やかに登って行く。道の両脇は秋の花が咲き乱れている。 マツムシソウ、ヒメヒゴタイ、アキノキリンソウ、ハハコグサ、タムラソウ、オヤマボクチ、ヨツバヒヨドリ、 ヤマシロギク、ワレモコウ、ハンゴンソウなどである。写真を写すが、きりがない。帰りに写すことにして 先を急ぐことにする。
登りきると石のある頂上らしきところに到達する。標識は何もない。地図から するとここが白谷が丸のような気がする(半島のケルンのあるところが今までは白谷が丸と思っていたが・・・) 。ここから暗いモミかツガの林に入り、くだり出す。ここからは 我々にとって未知の世界である。


< 白谷が丸の花風景 >



































樹林の道を下って行くと広葉樹の大木が茂る鞍部の広場となる。 立て札があり「黒岳の広葉樹林 やまなしの森林100選」とある。 林床はヤマトリカブトでびっしり覆われている。ところどころにマルバダケブキの鮮やかな黄色が彩りを添えている。 奥の方には白い穂先のサラシナショウマがボ〜と立ち、深山の雰囲気をかもし出している。 また、森の端の明るい空間ではガマズミが赤く輝き秋の雰囲気を漂わせている。 広葉樹の森の道はやがて 緩やかに登り、林床の下草はカニコウモリの細い白い花に変わって行く。しかし、それもつかの間、 モミ、シラビソであろうか薄暗い針葉樹の登りが続き、やがて針葉樹の森にポッカリと空いた空間の 黒岳山頂に着く。展望は何もない。

< 黒岳の広葉樹林風景 >


























黒岳からは薄暗い苔むす針葉樹の尾根歩きである。 時々岩場らしきところが変化を与えてくれる。20分弱も歩くと、林床は小笹に 変わり、ダケカンバなどが混じるようになる。さらに10分ほど歩くと開けて 「川胡桃沢の頭」というところに着く。平らな笹の原でピークらしくない。 ここで小休止した後、カラマツ林に入って行く。思いのほか下る。ドンドン 下る。今はいいが帰りが思いやられる。
10分ほど下るとパッと開け、正面に 牛奥ノ雁ガ腹摺山を仰ぎ見る気持ちのいい鞍部の草原に飛び出す。 大菩薩の雰囲気のする開放的で明るく伸びやかでいいところである。ここでも小休止する。 笹の原にはマルバダケブキが点在し、林縁にはダケカンバ、ナナカマドが立ち、もう ナナカマドは少し色づきはじめている。
牛奥ノ雁ガ腹摺山への最後の登りは笹の原で見えているだけにつらい。登りきったと思 ったら、まだ上がある。ピークと思えなかった川胡桃沢の頭もドンドン競りあがって 立派なピークに見えてくる。
疎林の平坦地を少し歩き、本当の最後の登りとなる。 そして、やがて道標の立っているのが見えてくる。最後だと思うと、開放された気持ち になり、「ヤッホ〜」と思わず叫ぶ。
思いがけず「ヤッホ〜」と返ってきた。今まで人と一人とも会わず、まさかこんな ところで、と驚き、と同時に、懐かしさがこみ上げてきた。 大菩薩・小金沢山を経て登ってこれらた東京のご夫妻であった。先週、我々も小金沢山 に登ったので話しが弾み楽しい一時を過ごさせてもらった。 山で出会ったのはご夫妻だけであった。本当に静かな山歩きであった。

< 牛奥ノ雁ガ腹摺山への道 >












川胡桃沢の頭




牛奥ノ雁ガ腹摺山の途中から川胡桃沢の頭を望む







タムラソウ



ヒメヒゴタイ



アキノキリンソウ