山伏 A.山歩き/2.山紀行/・・山伏

山伏
(やんぶし)
笹の原に立ち枯れ木とヤナギランの咲く明るい山頂



山伏('02-8-28歩く)
ずいぶん前から、のびやかな笹の原に、ヤナギランが咲き乱れ、枯れ木が立つその向こうに富士山が見える詩情豊かな風景に 引かれ、1度行きたいと思っていた。今まで山伏を「やまぶし」と読んでいたが、実は「やんぶし」 であることをガイドをまじめに読んでみて知った。なぜそう読むのだろうか?
山伏は実に遠い。 高速降りてから山岳道路を飽きるほど走る。山歩きなのか、ドライブなのか、ドライブに行ったようなものである。というようなことで 「登山口まで」の項まで設けてしまった。

登山口まで
自宅を5:00にでて東名高速厚木ICから清水ICへ向かう。自宅付近は出発前まで黒い雲が広がり雨が 降っていた。本当は昨日行くつもりであった。天気予報では台風の接近で湿った空気が入りこみ雨だといったので 今日に伸ばしたが、昨日は予報が外れてお天気だった。今日は天気が良いといいながら雨が降っている。 もう信用できない、明日にかけて天気は回復基調なので出かけてみた。
どんよりとした天気はとうとう御殿場あたりでは雨となったが、富士に下るとすっかり止んできた。 由比SAで小休止して東名を1時間20分ほど走って清水市に着いた。静岡ICで降りることも考えたが、東名が 清水から海岸よりに向かい、降りてから静岡市街地を通り、東海道線をくぐらなければならないので 混雑すると考え清水とした。
清水ICからは具合よく直ぐ高架の静清バイパスに入る。 この高架のバイパスが延々と続く、良くもこんなに長い高架道を作ったものだと感心しながら行くと、74 号線井川、梅ケ島方面へのICが見えてくる。それを降りて、右折して道なりにどこまでも行く。 とにかく、目印のキーワードは「井川」である。やがて小高い丘の上に上がりきると安部街道27号線と交わり、 そこを標識にしたがって右折する。そして安部川沿いに延々と行き、 玉機橋で左折して梅ケ島方面と分かれる。
それから河内川沿いに少し行くと右に口坂本への道が分かれているが、 キーワードの「井川」方面の標識にしたがって真っ直ぐ行く。 27号線は口坂本方面の道であり、しかも先では合流する。家に帰ってきて見た山渓のアルペンガイドの記事でも 口坂本の方を通っていない。ということは安部峠、富士見峠を通って行く真っ直ぐの道の方が近いのかもしれない。
この後は西河内川沿いに狭いカーブした道を延々と登って行く。まるで車のハンドル操作の練習のようである。 カーブミラーを確認し、暗い杉林の道ではライトをつけたり、本当に気づかれする道路である。 やがて道路も広くなり、急勾配を登りきると大間方面からの南アルプス公園道路が交わる。ここでも井川方面 へ右折して緩やかに登って行く。間もなく「富士見峠」に着く。ここには展望台、トイレ、駐車場があった。 清水ICから1時間10分かかった。
富士見峠からは下りとなり、今度は目印のキーワードは「県民の森」「リバウエル井川スキー場」である。 5分も下ると右に「県民の森」の標識が見えてきてそれにしたがって右折する。ここまで来てようやく山伏も 近くなったかなと思う。道なりに行くと、やがて変形十字路となっていて、口坂本からの27号線がここで交わっている。 ここでも「県民の森」と「リバウエル井川スキー場」の標識にしたがって真っ直ぐに行く。そしてまたくねくねとまた 登って行くと開けてきて右手に「リバウエル井川スキー場」が見えてくる。
これを過して行くと道はフラットになり「県民の森」の看板が出てて展望や景色が良くなる。この森は本当に広い。 豊かな広葉樹林の尾根と平行した林道が延々と続く。大木が繁って深山の雰囲気の好ましい道である。道も登山口のおおよそ 500m手前まで舗装されている。 この林道は「勘行峰線」で山梨県早川町の雨畑湖までつながっているが山伏の登山口の百畳峠で工事中のため 交通止めとなっていた。ようやく富士見峠から1時間弱かかって山伏の登山口である百畳峠に着いた。 清水ICからは実に2時間である。 そこは20台くらいは駐車できる広場になっており、山また山の景色の中にひときは大きく小河内山が見渡せられる。

山伏へ
まだ夏山のシーズンであるが、車は一台も止まっていない。登るのは我々だけの様である。静かな山が楽しめそうである。 また、登山口にはカラフルな手製の杖が沢山備えられている。ヤナギランの花の最盛期の頃の沢山のハイカーの名残が感じられる。
とっつきが少し急であるが、すぐ緩やかな笹とダケカンバの若木の樹林の中の道に入って行く。 ところどころにナナカマドがまじり、またノリウツギの白い花が彩りを添えている。ダケカンバの若木の太さのそろった 美しい木立が続く中を緩やかに登って行く。新緑の頃はさぞかし綺麗だろうと想像しながら10分ほど歩くと 笹の原の明るく開けた窪地にでる。そして尾根道と合わさる。この付近にはノギク、アキノキリンソウ、トリカブト、クガイソウが 咲き乱れ小さな花園となっている。サッカー場くらいの大きさの窪地は一面みずみずしい色の熊笹に被われ、ダケカンバが散立しして 景色のよいところである。
一休みして山伏方面へ左に向かう。すぐ潅木の中に入り上って行く。そこを抜けると階段とか のある急登となるが、笹の原にダケカンバの散立する明るい道である。道端のノギク、アキノキリンソウ、まだ咲いていないが 紫色の蕾のリンドウ、ソバナの花などが和ませてくれる。やがて道も緩やかになり、開けた市営山伏小屋分岐点に達する。 これよりナナカマドやノリウツギの白い花が混じるダケカンバの若木の林の道に入って行く。左下の樹間に 小屋の屋根が僅かに見え、小屋からの道が合わさると道は階段のある登りとなりモミの木とかが混じる ようになる。
10分も登ると右側がガレ場(扇ノ崩)で切れている開けた展望台に達する。ガレの斜面を見下ろすとウスユキソウが群生し、 谷を挟んだ向こうの眼下の山々の尾根をガスがゆったりと流れて行く。 このぶんでは心配したお天気もそれほど悪くならないようだ。
そこからモミの樹林帯の平坦な道を 行くとまた登りとなり、5分ほど歩くと道標の立つところに至る。そこは西日影沢からの道が 登ってきて合わさったところであった。さらにやや薄ぐらいモミ、ツガの樹林帯の道を8分 ほど登って行くと、明るく大きく開け、笹の原の丘を見上げるところにでた。ここで道が左斜めに一つ分か れている。どちらにしようかと迷ったが、本道らしき真っ直ぐの道を行くことにする。
道の両脇には支柱とロープの柵が設けられている。 少し登ると丘の上ののびやかな景色が開け、左側の笹の原にはヤナギランの残り花が咲いており、木道の遊歩道がそちらの方へ伸びている。 帰りに本道を戻ることにして、まずヤナギランの咲く遊歩道に向かい、ヤナギランの写真を写す。
ヤナギランの花はもう穂先のほうが僅かに残っているだけである。しかし、今まで霧がたちこめていただろうか、 花びらに雫をつけている。 フアインダーをのぞくと雫が花びらのピンクに染まり、宝石のように逆光の柔らかい日差しにキラキラと輝いている。 自然はどんな状態でも美しさを演出し、何と多様で奥が深いことだう、とつくづくと思う。
遊歩道を本道の方に廻りこむと次は 太い枯れ木立の風景が現れる。のびやかな笹の原に枯れ木が散在し大台ケ原のようで、景色が良い。花を手前にバックに枯れ木立を配したりして写真を写す。本道にでて、左に笹の原の道を緩やかに登って行くと 程なく空と笹の原の境からダケカンバの木と道標の先がぞいてきて大きくなり、山伏の山頂に達した。
山頂は標識が3本ほど立ち、2等三角点標石のある平坦な土の広場であった。右を見ると 大谷崩れがガスに見え隠れしている。生憎富士山は見えなかった。
小休止した後、どんな風景があるだろうか 大谷崩れの方角に適当に行ってみることにした。5分も行くとモミの大木やダケカンバの大木が現れ、好ましい 風景であるので写真を写す。それからさらに15分ほど下ったがモミ、ツガの林の道で、見るべきものは なかった。唯一オレンジ色のマスタケを見つけ、晩のおかずにできたのが収穫であった。 山頂に戻ったが、昼には早いので、小休止した後、またもと来た道を写真を写しながら下山した。 帰りはガスも切れ、笹の原に散在する黒木の向こうに日本三大崩れの一つといわれる大谷崩れが荒々しい 山肌を見せている。 そして、途中のガレ場の展望台 で昼食をとり、のんびりと百畳峠まで戻り山歩きを終えた。

帰りは林道をゆっくりと観察しながら走った。来るときは気が付かなか ったが結構ダケカンバの巨木が多く、広葉樹の豊かな森でなかなかいいところである。秋の紅葉のころも よさそうである。また、フジアザミ、ノギクの群生、色鮮やかなハギの花など も目につき、途中停まっては写真を写し写しして、道草をしながら戻った。

(コースタイム)
自宅5:05--東名厚木5:27--清水IC6:45--富士見峠7:55-- 百畳峠(山伏登山口)P8:40〜51--市営山伏小屋分岐9:14--ガレの展望台9:25〜33-- 西日影沢分岐9:38--笹の原二又9:45----遊歩道路散策しながら----山伏10:00〜10:45 --ガレ展望台11:27〜40--窪地12:10〜25--百畳峠(P)12:40

(地図)
  • 1/25000地形図 梅ケ島
  • 山伏までの道路地図
  • 略図


    ●追記
    • 帰り、リバウエル井川スキー場に寄ってみた。ただのスキー場かと思っていたが、レストラン、ふれあい牧場もあり、乳牛がのんびりと草を食んでいた。 また、スキー場にはコスモスが植えてあり、この時はちらほらであったが、9/中旬ころにはコスモスのお花畑も楽しめそうである。家族連れで県民の 森と合わせて楽しむのも良いと思われる。
    • 以前、雑誌山渓に山伏が紹介されていた。そのコースは牛首峠に車を置いて、上の略図のC、D、山伏、D、P、牛首峠のコースで、所要時間は3 時間20分とあった。そのうちP→牛首峠の林道歩きは45分であった。
      なお、牛首峠の標識は林道より引込んだところにあり、見落とし易いが、猪ノ段登山口の看板 のところまで行って引返しても車だとたいしたロスにはならない。また、この林道には多くの駐車スペースがあり、駐車場には困ることはない。
    • 林道勘行峰線は工事中のため百畳峠で通行止めであった('02-8-28現在)。
    [山紀行]